アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
面白かった。まず題名もさることながら設定が独創的かつ上手くて(価値の高騰した生きた動物を買うのがステータス(を超えてdisciplineと言うべきか)になっている社会で、電気じかけの動物を所有せざるを得ず満たされない主人公、というのは勿論、放射性物質のせいで次第に人の繁殖能力や知能が失われていくおかげで、人とアンドロイドとのしきい値として、それらでない「共感能力」が問題になるという所も)、これを考えただけでもう一本取ったも同然、と思った。
勿論そうした所だけでなく、本編通じて問題となっている人とアンドロイドとのしきい値としても、絶対的な基準などなく対象との関係性やそれへの愛着によってしきい値が規定されるのだ、というまあよくある感じの話に終始するだけでなく、そうした下で生じる、自分にとっての「人」が他者にとってそうでない、という状況や、それによる自身の分裂(終盤に3体のアンドロイドを殺しに行く下りとそれによる喪失)とか、その後のマーサー教徒的な「共感」(本質的に自分の中で閉じた)とは異なる(メタ的な立場という方が正確かも)「悟り」まで明示してある所とかが重要なのかな、と感じた(本の訳者あとがきとか見ると共感する能力とか親切心が「人」を規定するものだ、的な話に留まっているのでもしかしたら誤読かもしれないが)。
ところで情調オルガンはmoog organのもじり?
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
- 作者: フィリップ・K・ディック,カバーデザイン:土井宏明(ポジトロン),浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1977/03/01
- メディア: 文庫
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