アイデンティティと暴力

単一のコミュニティ(例えば宗教や自らの国、文化などを共有する集合)の一員として、自分を規定することによって安易にアイデンティティを確立することや、他者をその人の帰属する(特定の)コミュニティの特徴によってのみ捉える単眼的な見方を批判し、多様なバックグラウンドからなる「複雑な存在」として人間を考える、という見方にたって、現代の様々な問題の根とその打開について考えよう、という本。
以前コミュニタリアニズムについてかじった際に覚えた違和感をどんぴしゃりといった感じで解消してくれたこともあり、面白く読めた。上で挙げたような基本的な考え方を最初に持ってきて、それを実際に問題に適用していく様子を続く章で見せてくれるという構造も、分かりやすさに大きく寄与している。とても良い本と思う。

アイデンティティと暴力: 運命は幻想である

アイデンティティと暴力: 運命は幻想である