五重塔

これを読んではじめて名文というものを知った気がする。無知とは恐ろしい。
中身に関しては個人的にはやはり、塔作りへの没入を通じて「あちら側」へ行けそう、行ってしまったようでいて、完全には行ききれず、生きづらい浮世やそこでの名誉を求める自分の気持ややしがらみからなかなか逃れられないという十兵衛と、侠気という、自身が生きていく上での従うべきもの(というかある種の呪いか)を見つけながらも、それに沿うと決めたどもなかなか単純に幸福には生きていかれない源太の、一見対照的のようでどこか似た姿が。
それにつけても上人の気に食わなさよ。「さかし」というのはこういう人のためにある言葉なのでないか。

五重塔 (岩波文庫)

五重塔 (岩波文庫)