重力とは何か

この分野の第一人者が特殊相対論から初めて超弦理論の話まで解説しよう、というきわめて意欲的なコンセプトで書かれた本。
最初の方は、紙幅とか限られた中で、かなりかいつまんだ話ながら例示とかも入れつつ分かりやすく進めていくその話の上手さに、どちらかといえば話し手側の大変さを想像しながら、楽しく読んでいられるのだが、最後の方、特にハイライトの一つのブラックホールエントロピーの話の辺りになってくると(数式ないので当然だが)ジャンプどころではないアクロバットが展開されて文字通りの置いてきぼりになる(勿論一般向けの本なのは承知しており、ここをどうこう言うつもりはない)。「このことから―がわかりました。」とかさらっと書かれてて目が点になるんだが、一方で分からないのに妙に惹かれるというか、そういう書き口も狙いのうちとしたら凄すぎるとか思いながら一気に読み通せてしまう感じ。

御託はさておき、こんなに薄い本でこれだけの話を凝縮して一般向けに書く、という難度の高い企画に超一流の研究者が乗り、きわめて高いクオリティで実現してみせた(絵も自前で!)、というその「心意気」みたいなものがとにかく素晴らしいの一言。きっとこの先読まれ続ける本の一つだと思う。

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)