純粋なるもの

図書館でパラ見してそのまま読みきってしまった本その2。
将棋やっててこれ未だに読んでなかったとか、どれだけモグリなんだ、という感じだが。

いわゆる羽生世代、そのなかでも特に羽生善治森内俊之佐藤康光森下卓の四人に焦点を当てて、彼らの将棋への真摯さとそこから来る洗練された人間性みたいなものを、同じ棋士としての視点から、前三者と研究会もやっていた(今となっては伝説の「島研」)著者が冷静かつ温かみのある描き方をした作品。

今でこそこういう文章は将棋界に増えたと思うけれど、やはり当時は相当新しかったのではないかと思うし、その後にはっきり影響を与えているという意味でも、意義は大きかったのかなと思う。
ただ、その辺の後追いの文章とはっきり一線を隔しているのは、やはり同じ棋士だからこそ分かる、十数年の付き合いながらも今後ずっと相対し続けるという関係からくる独特の距離感や、それによって生じる微妙なあやというか機微、みたいなものの描き方の巧みさ。これの存在が本書を不動の地位にしているのだと改めて感じた。

純粋なるもの

純粋なるもの