久々に一冊読みきったということで。
まあ自分がこれを知ったのは、たしか中学生ぐらいの頃に笠井潔の作中のニコライ・イリイチのモデルがスタヴローギンだというのを見たのだったと思うのだが、その頃からいずれ読もうとか思いつつ放置してしまい、大学生になったら生協とかにドストエフスキー何冊読んだとか言ってるような人がたむろするようになってげんなり、みたいな感じで敬遠してしまっていたのだった。
どうでも良い話はさておき、いざ読み始めると上巻は正直だいぶ冗長で7割ぐらいの量で書けんのか、とか思わなくもなかったが、スタヴローギンとピョートルが現れてから徐々に物語は加速し、上巻終盤の悪霊憑き達の乱痴気騒ぎからは正しく怒涛の勢いで終末へなだれ込む感じ。凄まじい「引力」で刺激的であった。
印象深い場面としてはやはりスタヴローギンの告白の場面と、キリーロフとピョートルの最後のやりとりの場面になるだろうか。このあたりは場面も悉く鮮やかで、日頃実際の様子とか思い描くことなく文章読む自分でも、脳内に様子が綺麗に浮かぶようであった。
後は出てくる人たちの「自分たちの借り物さ」への閉塞感はひしひしと来るものがあった。高校の授業で読んだ「現代日本の開化」とか不意に思い出したが、てんで見当はずれやも知れぬ。
ともあれ最初が気持ち根性を要する(自分が本読まなさ過ぎただけかも知らんが)のを除けば文字通り破格の面白さと言える。何遍も読み返すというわけには行かないだろうことを思えば、贅沢な時間であった。
- 作者: ドストエフスキー,江川卓
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/12
- メディア: 文庫
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