将棋世界11月号感想とイメージと読みの将棋観について

将棋世界11月号読んだ。新イメージと読みの将棋観から、何事もなかったように羽生名人と藤井九段が抹消されていて笑った。
しかしかねてから思っていたが、最新形について尋ねても、通りいっぺんの回答しか得られないに決まっているのだから(これは今月の勝又六段の講座でも、最新形の質問には配慮するということが言及されていたように当然のことである)、もう少し質問側が工夫をこらす必要がある、といえる。
そもそもこの企画の元ネタは言わずと知れた名著「読みの技法」だったわけだが、あの本はむしろ一つの可能性としての実戦的な(研究最先端の対義語に近い意味で用いている)局面を扱い、トップ棋士の読みの内容、さらに大まかな局面の把握の感覚について島八段(当時)が巧みな質問を通じて引き出したところが名著たる所以なわけで、それに比べると本企画はお題の局面がお遊び的なもの(初形で飛車角逆にするとか)最先端のそれであったりして、トップ棋士の読みの内容を明らかにする、ということにそぐわない(研究がものを言う局面ならば自身のそれを明かしたくないのは当然だし、それにも増して現在の情報戦真っ只中の状況では、トップ棋士といえど彼らの短時間の読みが研究の上を行く、ということは難しいのはもはや自明に近い。よって必然的に研究結果の方が発言のウェイトが重くなるため、研究結果が脳内にある状況でそれ以外の手について語るということがし難くなるのではないか。)。その結果トップ棋士を集めているにも関わらず、今一歩踏み込まれない情報ばかり(本誌の読者なら観戦記などから既に得ているような)が語られ、結果としてどうも面白く無い連載になっているのだと思う。

改善案としては、やはりこの企画はお題の作り方が全て、と思うので(これだけのメンバーが忌憚なくしゃべれる局面を準備できれば、面白くならないわけがない)監修として、誰かプロ(プロである必然性はないが読みに重点を置ける局面を準備できるための能力が高いのはやはりプロだろう)を採用し、序盤、終盤に関わらず漠然とした、読みや大局観がものをいう局面を提出することが必要と思う。その結果として、たとえ局面の数が毎月4つから減ったとしても、披露される読みの密度が上昇すれば、読者は今よりも楽しめるのではないだろうか。


無駄に長文を書き連ねてしまったが、後は勝又講座での阿部四段の藤井先生信奉っぷりが良かった。後毎度のことながら昇段の記は良かった。特に船江新四段のは読んでよかった。地味に印象的なのは羽生名人が自戦記で広瀬王位に言及してたところ。やはりよほど悔しかったのか。おそろしや。