火星の人類学者

脳神経科医の筆者が、往診という形での交流を通じて出会った様々な患者について、彼らが体験している(しばしば非常に目新しい)世界の感じ方、そして彼らがどのようにそれと共に生きているか、を描いた本。
全編通じて、患者たちの驚くべき症例に対しての筆者の戸惑いや緊張などが非常に率直に描かれている(場合によっては少々冷ややかに思えることもある)点は、評価がわかれる点かもしれないが個人的には正直な感じで悪くない印象を受けた。
後はやはり、出てくる人が皆症例のために世界から切り取られるような体験をしているにもかかわらず、その中でどう生きていくか、という所を探り、前を向いてやっていく過程には心打たれる。
非常に良い本だと思う。個人的な一押しは表題作。

火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)

火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)

設計技術者のための有限要素法はじめの一歩

有限要素法の解説というよりは、間違った解析や解釈をしないための注意点をまとめた本。

図解 設計技術者のための有限要素法はじめの一歩 (KS理工学専門書)

図解 設計技術者のための有限要素法はじめの一歩 (KS理工学専門書)

統計学入門

統計学や確率について初歩から丁寧に書かれた非常に良い本。教養の時に読んでおけば良かったと強く感じる(教養の時は、対応する授業について良い噂を聞かなかったので軽視してしまっていたが勿体無いことをした)。
章立てとしては1から3章が導入、4から8章が確率について。9から13章までが標本の扱い方、そこからの推定や仮説検定といった話。
確率部分までは(流石に)大体既知だったが、仮説検定などについて知らない点も多く、勉強になった。

統計学入門 (基礎統計学)

統計学入門 (基礎統計学)

アップ・セット・ボーイズ

15年ほど前に週刊将棋に連載していた漫画をまとめた本。これを今出すちくま文庫はすごいと思う。
題材は高校の将棋団体戦というちょっと異色なもので、高校大会の独特のちりちりした感じと鬱屈した気持ちと暑苦しさの入り交じる感じとか、「表」の将棋漫画には出てこないような所とかが描かれていて面白い(おその辺は作者も自己言及的)。また、中で描かれる大会の様子なども実際に近いもので適切に書かれていると感じた。
それにしても自分程度でも、色々思い出される所があるというか、ちょっと冷静には振り返れないような部分が想起されたりしてしまったので、強豪とか高校の将棋部にいた人になると落ち着いては読めないのではないか、とか思ってしまうが、まあそういう話。予想を超えて大変面白かったです。

アップ・セット・ボーイズ(上): 明日葉高校将棋物語 (ちくま文庫 や 45-1)

アップ・セット・ボーイズ(上): 明日葉高校将棋物語 (ちくま文庫 や 45-1)

アップ・セット・ボーイズ(下): 明日葉高校将棋物語 (ちくま文庫 や 45-2)

アップ・セット・ボーイズ(下): 明日葉高校将棋物語 (ちくま文庫 や 45-2)